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泣ける話

 
さて
あとはこいつをどうや
て泣かせるかだ
 
首根
こを乱暴に掴まれ持ち上げられながらも
その
娘に表情らしいものは現れなか
 
白髪交じりのくすんだ玉虫色が特徴的な
伏し目がち
の少女である
歳は
十代半ば程
 
て泣いてくれるんなら楽なんだが
 
そこそこ強めの拳を
鳩尾に一発
 
うげ
と苦しそうに言うが
顔を見れば眉をほんの少
し八の字に近づけた程度だ
 
いいパンチです
痛いのは慣れてるけど好きで
はないので早めに満足して下さい
 
これじ
泣けない
 
爪を剥がしたら泣いてく
れるのか
 
それとも
あのうずくま
てる両親を生皮剥いで殺せ
ば泣いてくれるか
 
答えろよお嬢ち
 
下卑た微笑みを近づけながら
男は一組の男女を指さ
 
邪魔だ
たので三発づつ顔面にパンチをくれてや
ら見事に静かにな
 
その脅しに対し
少女は尚も平静を保
たままだ
 
私の爪は手も足もと
くに剥がれてますし
あの二
方は私との血縁関係はありません
多少恨みがあるので
彼らに対する暴行は止める気はありません
内心大爆笑
レベルです
 
と言
て余
た袖から両手を差し出す
 
指先が赤黒くな
た痛
しい姿に
男の方が顔をしか
めた
 
なるほど
その二人
お嬢ち
んを拉致監禁し
てたわけか
 
はい
それであなたも私の涙目当てにこれから拉致
監禁するわけですね
 
そうだ
一粒に云千万も出す金持ちがいるからな
宝石の涙を流す少女
手に入れば一生どころじ
なく遊
んで暮らせるぜ
 
その台詞に
またか
と言わんばかりに少女は大き
くため息を吐く
 
もう説明するのも疲れました
確かに私はその
噂の人物です
過去に沢山固形の涙を流しました
でも
 
でも
 
ここ数年
涙を流した事はありません
余りにも泣
きすぎて
身体が変にな
てしま
たようです
泣けた
としても
以前のように宝石を出すことができるかどう
 
 
 
本当か
 
にわかには信じがたいが
 
無論
みんな嘘をつくなと疑
て私をよ
てたか
て虐めました
涙目当ての人達に次から次へと流される
最中にドサクサに紛れて拷問フ
チの人が混じ
てたり
して
それはもう酷い目に
 
殴る蹴る折る剥がす焼くで済めばまだ良い方です
だらけの黒
しい風呂に放り込まれた時は流石に泡吹い
て失神しました
それでも涙は出ませんでしたが
構前に両親が目の前で殺されたんですけど
それが最後
ですかね
 
さら
ととんでもない過去をいくつもぶ
こんでくる
少女に
男もち
と同情しかける
 
人間
て醜いな
 
女の子相手に会
秒で腹パンかました人物の台
詞とはとても思えない
 
少女相手に会
秒で腹パンかました人物の台
詞とはとても思えませんね
 
何で今地の文と同じこと言
たの
 
そんなわけで
どんなに虐げようとも私は泣くこと
が不可能です
あしからず
 
とは言
ても
はるばる遠くまでや
てきてはいそ
うですかと帰るわけにはいかん
とと来い
 
腕を強引に引
張る男に対し
少女は足早についてい
いとも簡単に服従の道を選んだ
 
ちな事するんですね
やぶさかではないですよ
 
俺をどんな奴だと思
てるんだ
 
犯罪者であることは間違いない
 
アジトに帰るなり
毛抜きを取り出し座らせた少女の
鼻毛をぶちんと抜いてみる
 
鼻を押さえて
 
いたいです
 
とは言うが
目は潤む気配すら見せない
 
ダメみたいだな
 
涙腺の神経にもつなが
ている鼻毛を抜いても出ない
と言うことは
本当に体質がおかしくな
てしま
てい
るようだ
 
苦痛方面の事はあらかたやり尽くされた感じはあり
ます
今度は感動路線で攻めてみてはいかがでし
 
単にお前が楽したいだけだよな
 
少女と一緒に過ごしていく内に愛情が芽生え始めい
つしか二人はかけがえの無い家族へとなり子供に囲まれ
て幸せに過ごし寿命が尽きる寸前に
今までありがとう
て言えば涙の一つくらい出るかもしれません
 
スパンがなげ
 
今泣け
 
少女は勝手に冷蔵庫のビ
ル缶を開けてぐび
とあお
り始めた
 
拉致され虐げられてまた拉致されを繰り返してい
く内に
彼女の神経はそれはもう太くな
てい
たので
ある
 
そこそこ盛
た過去話に対するリアクシ
ンからこの
男はマシな方だと判断し
たかれるだけたかる事を決め
ていた
 
映画とか観たら泣くかもしれません
あれ借りてき
て下さい
グリ
ンマイル
 
借りてきて一月経
た猫のようにふてぶてしい少女に
男は舌打ちし渋
ながら出かける準備を始める
 
扉を開けて出て行くその背中に
少女が付け足した
 
あとポ
プコ
ンとかあ
たら大泣きするかもしれ
ません
 
そうして一
月が経過した
 
結論から言うと
 
ダメみたいだな
 
ダメみたいですね
 
ダメみたいだ
 
レスト
ガンプもニ
シネマ
パラダイス
も泣かない
 
アルプスの少女ハイジもフランダ
スの
犬も母をたずねて三千里もダメ
 
ガングレイヴの
も買
てや
 
ダメだ
 
えらく出費がかさんだが
少女は面白がりながらも泣
く素振りすら見せなか
 
あれで泣けない奴は人間じ
ないです
 
お前泣かなか
たよね
 
私は涙を流しません
ロボ
トだから
マシ
ンだ
から
だだ
 
だだ
 
仕方ね
売るか
 
売らないでくださいよ
また見るんですから
 
いや
なくてお前を
 
 
とんと首をかしげる少女
 
け涙流せないなら置いといても仕方ないし
ロリコンに売ればそこそこ金になるだろ
 
少女はここに居着く気
たので
冷や汗を流
して男の腕に縋り付いた
 
て下さい
てくれる
て言
たじ
ないで
すか
 
てないぞ
 
私の中ではそう言う事にな
てるんです
貴方はこ
れまで私を拉致した中でト
に入る程のまともな人
この生活を棒に振るわけにはいきません
 
秒で腹パンかまされた上にロリコンに売
ろうとしてる相手がえらい好評価だな
 
そろそろ本気で泣く感覚を取り戻してきた感じはす
るんですよ
もうち
と頑張らせて下さい
 
そう言
てもな
 
宝石の涙を流せるのは私だけなんですから
手放し
てからき
と後悔しますよ
 
うどその時
つけ
放しだ
たテレビから音声が
聞こえてきた
 
次のニ
スです
宝石の涙を流す少女がついに発
見されました
 
 
 
同時に画面を見る二人
そこには少女と同じく玉虫色
の髪をした女の子がカメラに向か
て喋
ていた
 
お姉ち
んと離れ離れにな
てから
髪の毛の色が
変わ
涙が
塊になるようにな
たんです
 
ぐすん
と鼻をすする彼女の目元から
大粒の宝石が
からんと落ちる
 
あれは
 
です
私の宝石より明らかにでかい
 
目を見開いて驚く少女
どうやら元
はそんな体質で
はなか
たらしい
 
悲しい時には黒い宝石が出て
嬉しくて泣いた時は
透明な宝石が出るんです
 
彼女の手元の小皿には
黒色に煌めく水晶のようなも
のが混じ
ている
 
私一種類しか出ないのに
 
お姉ち
どこにいるんですか
 
私は優しい人
に拾われて元気にしています
見ていたら
どうか連
絡をして下さい
 
震えた声で言いながら宝石をぼろぼろ落とす妹の姿を
姉は放心したように眺める他なか
 
上位互換だな
 
わたしの
わたしのあいでんて
 
いかに虐げようと決して泣かなか
た少女は
悔しさ
と世の無常さに打ちひしがれる
 
今とな
ては大きく価値の減
た宝石が
からんと床
に落ちた

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