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ep.5 死ぬことに慣れろ

一部屋八畳の安アパ
弐位斗館
その窓際に俺の
ドは置いてある
 
現在時刻は夜一時半
暗な部屋の中
ドに腰
かけて黙祷をしていた
 
少しして
窓を軽く叩くポルタ
ガイストに
待ち構
えていたかのように眼を開ける
行くぞ
ああ
 
窓の外には白き少女
冬羽
ふゆう
が無表情にこ
ちらを睨みつけている
 
我ながら情けない
こんな誘いに乗
てしまうなんて
早くしろ
ああ
 
ようやく
とため息をつくふりをして
深呼吸
をした
 
だが
それも悪くない
死ぬことに慣れろ
 
トから腰を起こすと
その下
ドと床の
ドスペ
スに右手を突
込む
ごそごそとせわ
しく右手をうごかし
獲物
を取り出す
聖刀
百日紅
さるすべり
 
ヤクザが使う必須アイテム
匕首
あいくち
に似
ている純白の木でできた
柄と鞘だけの日本刀
 
俺の住むマンシ
ンの東にある
高山
そのふもとの
白龍神社に奉納されていた宝刀だそうだ
龍神の魂の宿
る刀として祭られていたやつを
冬羽が持ち出し
俺に
渡した
私がその龍神だ
 
無茶苦茶なことを平気でい
てのけるその少女に
俺は畏怖の念と皮肉
そして感謝をこめてこうい
寝言は死んでから言え
お譲ち
 
刀を紐で背負うように体にくくりつける
 
まるでブリ
チだなと考え
そう考えた自分を鼻で笑
この刀で敵をぶ
た切る
まさにアクシ
の主人公
それも悪くない
 
そんな俺の心を見透かすように
冬羽が
ふふふ
笑う
別にその刀で霊を斬るわけではないぞ
むしろ霊は斬
れん
ただの刀なんだから
斬魄刀
けな
そんなもの現実には存在せんよ
アイデアとしては
秀逸だがな
 
ニヤニヤしながら俺を見る
たく嫌な気分だ
いつには自分の心の中を見透かされているようで
どう
も落ち着かない
なん
だと
 
見返す俺
そのしぐさを見た冬羽がにやりと口の
端を歪めた
 
図星か
そいつは笑
ていた
何のための刀なんだよ
 
俺はそ
ぽを向いて
冬羽に悪態をつきつつ
姉に気
づかれないようにアパ
トを抜ける
 
鈴虫が鳴く中
ツにジ
ンズ
靴は動きやすい
スポ
ツシ
ズとい
た割とラフな格好で夜道を歩く
 
首には
お守り
に穴をあけてひもを通したネ
クレ
ス状のものをかけていて
なんとも変な格好だ
自分で
思うんだからそうなんだろう
 
一度俺が
お守り
を忘れて白龍神社にきたときに冬
羽が激怒してそうしたのである
俺自身の意志では取る
ことができない
勘弁してくれ
それ
は戦うためさ
ただ
最近のマンガみたいに
人外
を相手に戦うわけじ
ないさ
刀で斬るのはい
つの頃だ
人間
だよ
ほんの三百年ほど前なんか
試し
に人を斬
てもよか
たのだよ
 
にやり
その瞳で俺を流し見る
 
嫌な気分だ
そうか
 
俺は動揺を悟られないよう
深呼吸をする
お譲ち
 
空を見つめ
溜息を吐く
 
大事なことを確認しなくてはならない
もし
優勝したら
願いが一つだけかなう
て本
当なんだろうな
 
厨二設定くさい話である
かくして
俺たちが交わし
契約
もそのような胡散臭いものだ
何かしら
戦い
勝ち残れば
願い
がかなう
 
普段だ
たら馬鹿ばかしい話である
親友である尚紀
このような話を持ちかけてきたのなら
死ね
の一
言で一蹴していた
マジで
ああ
本当さ
生き残れればな
 
だが
持ちかけてきたのは目の前にいる白い童である
幼馴染の尚紀とは違い
まずこいつは人間じ
ない
して自らを龍神と名乗る
半透明の存在
前にも聞きたか
たんだが
お譲ち
んには何の利点
がある
聞いてどうする
 
お前のような糞餓鬼にはとうてい
理解できないぞ
 
そうい
ふふふ
と笑う
 
うまく逃げたな
こいつ
この
お守り
てず
と首から下げてなき
いけないのか
 
気を取り直して別の質問をぶつける
多方向からの質
問は
本音を出しやすい
はず
別に
首から下げる必要はないさ
私が
肌身離さず
ていろ
とい
たのにもかかわらず
忘れてくるか
らだ
お前に死なれては私自身も困るんだと
何度言え
ばわかる
それはわかるんだけどさ
この
お守り
ダサ
いんだよね
俺の姉ち
んも
あきれて何にも言
わないほど
ダサいんだよね
 
割と本気でぼやく
 
それをしり目に白い少女は
ふふふ
とまた笑う
安心しろ
それ
はお前以外には見えてない
見え
るのは
同じような奴
だけだ
そろそろか
 
一通りの説明を冬羽から受けた後
俺は黙祷をする
気配を察知するためだ
 
時刻は二時
 
場所は双桜樹公園
二つ並んだ桜の木前
 
あの時ベンチに座
ていた
和葉
と呼ばれるミ
ジシ
ンは
今夜はいない
 
こんな夜中に何で刀で戦うんだよ
たく
 
殺し合いか
 
そこまで考えた時
ふいに後ろの方から
 
と金属音がした
振り返る俺
 
同時に
俺の左手首に痛み
火であぶられた
かのような激痛が劈く
 
くるくると
 
くるくるくると
 
いとも簡単に
俺の左手首は宙を舞
ていた
 
ボト
と鈍い音がして
敵の目の前に落下する
 
まさに瞬撃
血すら流させないほどの早業だ
気がつくのが遅すぎる
 
そいつ
が発する声
若い男
少年だ
前のボタ
ンを全部外した学ランを着ていて
中学生くらいに見え
その両手には左右一つづつ鎌を持
ていて
まるで
カマキリのような風貌だ
今回はそれ
 
外見は中学生のくせに鎖鎌という
実に人間にと
扱いにくい
武器も使いこなしていることに
実に関心
する
 
感心している場合じ
ない
 
ボタボタと今切られたことに気がついたかのように
血が流れ出す俺の手首
 
右手で
担いだ刀
百日紅
を引き抜き
俺の左手を
切り落とした
そいつ
に向か
て俺は突進した
 
片手を失うという序盤的には致命的な肉体的欠落を許
した俺は
ロジカルもくそもなく
早急に決着をつける
必要があ
 
俺の敵は
突進する俺に対して防御もせず
そこに立
ち続けた
 
横薙ぎに一閃
俺はそいつを斬
 
俺の刀はさも当たり前のように空を切
そんな攻撃では当たらんぞ
 
軽快なバ
クステ
プで俺の斬撃を交わす
そいつ
 
だが
それでいい
 
相手に防御行動をとらせることで
一瞬だけ相手の気
にそらし
思考を
戦いだけ
に集中させるこ
とができる
坊主
左手の出血を止めろ
ている
だが
長くはもたない
早急に決着をつ
けろ
わか
てる
 
この戦いには三つのル
ルがある
 
第一のル
ルが
公園中
で行うこと
 
第二のル
ルが
武器
指定の獲物
しか使えな
いということ
 
そして第三のル
ルが
相手
殺して初めて勝利
ということである
 
 
武器は指定のもの
というのは俺のサポ
存在の白い少女
冬羽が渡したこの
百日紅
のこと
対戦相手の
少年
が今回は
鎖鎌
とい
たようにど
うやら全員が刀とい
たような武器ではないらしい
 
暗闇の中
鎌が俺を襲う
街灯に刃が反射して一瞬き
と光る
 
良く訓練されている
無駄のない動き
 
こいつは骨が折れるな
だが
こう
何回も
死んでたまるか
 
俺は飛んでくる鎖鎌を
体を無理やりねじ
て最小限
の動きでかわし
一気に間合いを詰める
そして
攻撃すると同時に
どさくさにまぎれて拾い
ポケ
トに
かけて
いた
俺の左手
をここぞとばか
りに投げつける
 
相手の視覚を一瞬だけ飛んでくる
物体
に移せれば
それでいい
 
一瞬
まさに刹那の間
 
相手の懐に飛び込んで相手の心臓を突く
びし
 
刀のはじかれる音
 
そして背中に走る痛み
 
心臓に到達している
今のはち
とひや
としたよ
大輔くん
ぱり
君には驚かされる
 
両ひざから崩れ落ち
あおむけに倒れる
 
土の味が血の味とまざ
てなんとも言えなか
 
そして
一瞬だけ
意識がぷつりと途切れる
今回はこれで終わり
 
学生服の少年が一瞬光に包まれ
パンとパ
とい
たラフな格好に変わる
 
きまで持
ていた鎖鎌もいつの間にか
いつも持
ているギタ
に変わ
ていた
 
俺自身も意識を取り戻し
あらゆる
痛みから解放
され
左手を
軸に起き上がる
和葉さん
あなたは何ものなんですか
 
ただのミ
ジシ
ンとは思えないですよ
本当に
てか
どんだけ
武器に精通してるんですか
 
槍はもちろん
薙刀や鎖鎌まで
何度殺された
ことか
ただの亡霊だよ
今は
大輔くんも
人間
にしては
達人並みの上達だよ
うん
手首を落とされ
ても動じなくな
たし
そり
五体を順番に落とされたり
首を半分だけ斬
られるよりかはマシですよ
 
ニコ
と笑う笑顔が
俺にはち
と寂しく見えた
 
この相手に今晩
殺された
回数
実に
二十八回
ただし
この戦いで勝ち残るには
達人
ではだめ
なんだ
 
俺と和葉さんの会話に
白い少女が割り込んできた
なんとも不服そうな言い草である
まだまだ
練習
が必要だ
無傷で勝たなくては先が
思いやられる
 
そう
これは
練習
双桜樹公園の亡霊であ
る和葉さんの力を借りて
来るべき戦いの前哨戦
だか
らル
ルもこの公園内とい
たような縛りがあ
 
実際の
本番
の戦いとは
いつ何時始まるか分から
ないものらしい
突然
時間
が止まり
敵が襲
てく
らしい
勝てばいいんだろ
 
たら戦いで受けたダメ
はチ
ラになるんじ
なか
たのか
 
勝てばダメ
ジは
無くなる
正確には
無か
もの
となる
相手の存在を抹消することで
起こ
事象がなか
たことになる
というま
何だかよく
わからないがそういうことらしい
 
練習
では公園内で受けたダメ
ジは
俺が
死ぬ
ことで
すべてのダメ
ジが
無くなる
ように和葉
さんがル
ルを組んでいた
俺が勝
てもいいら
しいんだが
それはまだまだ先の話
正直勝て
る気がしね
今のお前では
には勝てん
そこらへんの人間
と思うな
相手は
何年生きているかわかんない
相手
なんだからな
 
何年生きているかわかんない
 
冬羽の説明によると
俺がいま首から下げている
守り
これを受け取
た時点で
肉体の成長が止まる
という
つまり
不老
状態になるそうだ
 
だが
不死
ではない
首をはねられたり致命傷を
負えば死ぬ
いつ何時現れる俺みたいな
有資格者
戦うための時間を約束してくれる
まさに
お守り
てわけだ
私が知
ている中でも最低で二百年生きている奴がい
その間
訓練をず
と続けているんだぞ
そんな奴
にた
た今剣術を覚えた奴が勝てると思うか
 
俺は言葉が出なか
 
今日稽古をつけてくれた和葉さんでさえ
十分の一も
本気を出していない
それがわかる
くらいが今日の
成長とい
ていい
てか和葉さん
て何者
だから
まずは
死ぬことに慣れて
生きのびる
ことを覚えて
もらう
和葉の力があれば生き返らせる
のくらいは簡単だからな
長い訓練に打ち勝つには
と量の訓練しかない
もちろん
明日も死んでもら
うぞ
 
こんな生活がいつまで続くのか
 
もしかしたら俺は
殺される前に
殺されてしまう
かもしれない
いや
殺されてる
んだけれどね
 
最初は指が二
三本無くな
たくらいでギ
アギ
喚いていたが
今ではもう片腕を切り落とされたとて絶
叫する気すら起きない
たく
 
死ぬことに慣れる
てのは
複雑だ

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