前の話 表紙に戻る 次の話

[←/J] 次のページ   [→/K] 前のページ   [L] 次の話   [H] 前の話
[N] 表示切替   [O] コメントページ  

寄辺ない、旅路。 (1)

 
もう一杯カルヴ
ドスを強請
僕は彼女の家を出
別れ際の玄関で
僕らは軽い接吻けを交わした
思議と
今夜はそれ以上あなたを欲しいとは思わない
ただ
少しだけ背負
た六弦が軋んだ音を立てているよ
うに思えた
夜風は肌に心地好く
月は高く
ただ
が異様に低く見える夜だ
時間を確認しようと開い
た携帯電話には
先輩からの着信が入
ている
僕は
それを無視した
かと言
電源を切ることもしない
アパ
トの階段を上る途中
またぞろ家の前にいるので
はないかとも思
たけれど
僕の部屋の前にそれらしい
影はなか
を簡単に浴びて
今夜はそのま
ま眠る
微睡みの中
吐く血
のメロデ
聞こ
えた気がした
僕はそれもまた意識から追いやり
眠り
の中へと落ちてい
 
翌朝早く
替えの下着とシ
それに財布だけを鞄
に詰めて
僕は家を出た
駅には既にあなたが居て
を見留めるといつものように微笑んでくれた
足元に
シンプルなキ
が置いてある
今日は
青い薔薇の
コサ
とレ
スの目隠しの付いたキ
プリ
ヌを被
腕には肘上まであるガントレ
トをはめて
のブラウスに
 
のロングスカ
トを合わせていた
対して僕は
 
 
のロング
 
の裾からシ
リングの上が
たジ
ズという恰好だ
たから
周りから見たら屹度ちぐはぐ
に見えたことだろう
それが可笑しくもあり
何となく
嬉しくもあり
僕はあなたに少し
笑い返した
 
始発を待
電車に乗り込む
よく晴れた日だ
僕らに会話はない
けれど
それはまるで苦ではなか
やがて
最初の乗り換えの駅に着いて
僕はあなた
の荷物を持
て電車を降りた
あなたもまた
後に続い
て電車を降りる
怖い
 
ムで電車を待つ間
あなたは僕にそう聞いた
少しだけ
 
でも
あなたがいるから
 
僕はそう答えた
ムに
電車が滑り込んでくる
この電車が
どんな終局へ向かうのか
僕にはわからな
けれど
あなたと一緒なら
どんな終局でも構わな
いと
そう感じていた
それはまるで
母を信じて疑わ
ない
子供のように
 
たたん
たたんと
電車は小気味よい音を立てて進ん
でいく
僕らの他に乗客はまばらで
クロスシ
トの車
両は静かだ
お母様は
どんな方なのかしら
 
不意に
あなたが口を開いた
僕はしばらく悩んだ後
母のことを話し始めた
 
母がどんな女性だ
たかを
幸せだ
た日
から崩壊
までを
別れの前の凶行を
僕は話した
あなたは僕の
顔を凝
と見つめ
時折頷きながら僕の話を聞いていた
至極冷静に
僕は語
こんなにも穏やかな
気持ちで母のことを思い返すことは
今までなか
たよ
うに思う
僕が母のことを語る間に
窓の外の景色は次
に変化していく
町の風景は街に変わり
また町にな
今度は緑が多くなる
トンネルの闇
一瞬見えた海
の青
また
僕が話し終える頃にはもう一度緑が濃
くな
やがて電車は見知らぬ街にたどり着く
あな
たは黙
たままう
すらと微笑むと
ほとんど肉のつい
ていない華奢な手で
話し終えた僕の髪を撫ぜた
何と
も言えない落ち着いた気分が
心に満ちてい
母の
住む町が
近い
 
電車を降りて
僕らはバスに乗
見知らぬ街の中
バスは進んでい
他に乗客はいない
たいした
会話のないまま
僕らは最後の乗り換えの駅にたどり着
いた
切符を買
ムに出る
僕らの町を出た頃
はまだ薄暗か
たはずだけれど
今はもうす
かり日が
ていた
知らず知らずの内に
僕の手があなたの手
を握
ていた
あなたはそれを
しかし確かに
握り返してくれた
もうすぐね
お母様に逢えるのは
ええ
屹度
お美しい方なのでし
うね
ええ
あなたに
よく似ているのでし
うね
ええ
もうすぐ
ええ
 
ここから電車に乗
三駅
もう
すぐそこに
がいる
そう考えると
息が詰まりそうな
狂おしいほ
どの感情に圧倒されそうになる自分がいた
もう
すぐ
 
強く
手を

前の話 表紙に戻る 次の話

 黒い子 先生に励ましのお便りを送ろう!!